【飛躍のヒント】#137 ストレスチェックが「うつ」を作る

先日、危ないことばを、見つけて
しまいました。

働く人のメンタルヘルス向上の
支援をしている事業者が作った、

「ストレスチェック」アンケートの
質問です。

135問ある中の、3問が紹介されて
いました。

これです。

1.努力して仕事をすれば、
ほめてもらえる。

2.私は上司からふさわしい評価を
受けている。

3.失敗しても挽回するチャンスが
ある職場だ。

あなたは、これらの質問をどう思い
ますか?

会社が社員に聞く質問として、
適切だと感じますか?

もしそうだとしたら、今日のお話は、
新たな発見があるかもしれません。

脳科学 x 言語学 x 心理学の観点
からいうと、そして、組織において、

「目標を達成する」という観点から
いうと、

3番はまだしも、はじめの2問は、
危険です。

「努力して仕事をすれば、ほめて
もらえる」を例に、考えてみましょう。

この質問に、社員が、「はい」と
答えると、ポジティブな回答 と
みなされるようです。

ということは、

会社は、社員に、そういうマインドで
いて欲しいと思っている、と
読めます。

ことばの裏を返せば、

努力していればOK。
私は上司からほめられるべき。

という前提を、社員に対して、
無意識にのうちに、埋め込んで
しまう質問なのです。

努力していれば、結果を出さなくて
OKなのでしょうか?

努力のための努力で終わって、
よいのでしょうか?

上司から「ほめられる」ことを求め、
ほめられないと、やる気をなくす、

「受け身」で、「自立していない」
社員を作って、OKなのでしょうか?

そういう傾向の強い人が、
ビジネスの現場で、
継続的に結果を出すことは
難しいでしょう。

上司の評価と、本人の自己評価が
一致すればよいですが、しばしば、

本人の自己評価が、
上司の評価より高い、

という現象が起こります。

そうなると、本人は、「頑張っている
のに、評価してもらえない」と感じ、

上司に対して不満を募らせたり、
上司との関係が悪くなって、
うつになったりします。

結果を出すためのプロセスや行動
は、とても大切です。

社員が職場で感じる、心理的
安全性も、もちろん大事です。

上司には、社員の成長を促す
フィードバックをする必要も
ありますし、

上司の評価に対する、社員の納得
を高めるコミュニケーション力や
リーダーシップは、不可欠です。

そのための仕組みや、互いへの
人としての敬意は、大切です。

その上で、

チームにとって必要なのは、

============
組織のビジョンやゴールを共有し、
そこに向かって、自立して動く人々
============
です。

経営者のコーチングをしていると、
人についてのお悩みで、必ず出て
くるのが、

「社員が指示待ち」

「自己評価が高くて、上司の見方と
のギャップが大きい」

「頑張っている、と本人は言うけど、
結果が伴わない」

です。

今日、ご紹介した、ストレスチェック
の質問、

「努力して仕事をすれば、ほめて
もらえる。」 は、

望まない社員を、無意識のうちに
作り出しうる、危険な質問なのです。

単純に言えば、
===========
「ほめる」「ほめられたい」は、
危険です。
===========

他にも、使いがちで、危険な
ことばは、たくさんあります。

もし、あなたの会社で、この手の
質問が、ストレスチェックの
アンケートに入っているなら、

より、みんなが主体的に動くことを
促す質問に置き換えることを、
おススメします。

それが、メンタルヘルスを向上
させ、人が生き生きと働く
職場を作る、王道です。

では、どのような置き換えが
可能でしょうか?

例えば、

Before:
努力して仕事をすれば、
ほめてもらえる

After:
私は、結果とプロセスを、
ともに重視している

Before:
私は上司からふさわしい評価を
受けている。

After:
私は、私の仕事で求められる基準と
達成する目標を理解しており、
達成のためのコミュニケーションを、
上司ととっている。

After の質問は、上司の「上司力」
向上にもつながります。

部下が、これらの質問に「はい」と
答えたくなるようなコミュニケー
ションをとる責任は、まずは、
上司にあるわけですから。

そのように、互いが主体的に関わる
文化があれば、私たちは自然と
結果を出します。

ちなみに、

アンケートを使って、社員の
「ストレスチェック」を行い、

高ストレスと判断される社員が
望めば、医師などの面談を
うけられる仕組みが、

今や、50人以上の社員のいる
会社に、法律で、義務付けられて
います。

ことばの選択を誤ると、
ストレスチェックがうつを生み出す、
本末転倒の結果を生んで
しまいます。

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業績を高めるために、どのような
前提を、職場の中で共有
していくのか?

どのようなことばを、組織の中で
流通させるのか?
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これって、すごく大切な問いだと
思いませんか?

そもそも、ストレスチェックという
仕組み自体が「ストレス」がある
という前提で作られています。

それを論じたり測ったりするたびに、
ストレスを強化する危険性を
はらんでいます。

どうせやるなら、「元気度チェック」
あたりにすればいいのに、と
個人的には思います。

坂本 夏子

人事コンサルタント
トランスフォメーショナル・コーチ®
LABプロファイル®
マスターコンサルタント