坂本夏子です。
「このところ、よく聞くことば」
シリーズ第3弾です。
1回目は、
【Social Distancing
人との距離を取る】
2回目は
【乗り越える】
でした。
今日のことばは【行動変容】。
人の行動を変えることで、
行動変容を促す、とか、
行動変容をもたらす、
なんて言います。
コーチングや人材育成では
よく使うことばですが、
この2週間、耳にする頻度が
増えました。
これについて、
4/6 の日経新聞で、
広島県の面白い実験のことを
知りました。
日本中、どこでも使えて、
使い勝手がよいことばのパターンが
わかるので、ご紹介します。
広島では2014年に土砂災害があり、
77人が亡くなりました。
その後、
県が防災運動を展開したところ、
非常持ち出し品の準備や、
避難場所を事前に確認する人が増え、
一定の効果がありました。
ところが、2018年に、
再び豪雨が起き、149人が死亡。
避難勧告や指示が出た地域で、
実際に避難所に逃げた人の割合が、
わずか0.74%でした。
多くの人が「自分は関係ない」
「今すぐ非難しなくても大丈夫」
と思ってしまったわけですね。
心理学でいうところの、
”正常化バイアス” が発生しました。
実際は異常なのに、
「イヤイヤ正常だ」と、
根拠なく思い込んでしまいます。
それをなんとかして、県民に、
イザという時はちゃんと避難する
という行動変容を起こし、
犠牲者を減らすには何をしたら
よいのか? と県は考えました。
そこで手を組んだのが、
災害とは関係のない、
行動経済学が専門の大学の先生。
そして、豪雨の最中に、
県がどんなことばで住民に
呼びかけたらよいのかを調べる
実験を行ったのです。
呼びかけ文は三つあります。
A: 「これまで豪雨で避難した人は
周りの人が避難していたから
という人がほとんどです。
あなたの避難は(周りの)人の
命を救います。」
B: 「これまで豪雨で避難した人は
周りの人が避難していたから
という人がほとんどです。
あなたが避難しないと人の命を
危険にさらします」
C: 「広島県では夏場に
土砂崩れなどが発生しています。
危険が迫った時に正しく
判断できる力をつけ、災害から
命を守りましょう」
AとBは、新たに作った呼びかけ文で、
Cは従来のもの。
この3つを示して、
豪雨のさなか、行政からこれら
3つの呼びかけが届いたら、
「実際に避難しようとするか?」
の問いかけを1万人の県民に
行いました。
あなただったら、どの呼びかけ文に
反応しそうですか?
実験結果は、、、
Cは行動変容をもたらす力に乏しく、
AとBには、その力がありました。
この結果に基づき、昨年から広島県は、
AまたはBの呼びかけを
知事自身が発することにしたそうです。
実際、知事さんは、4/6に、
「あなたの3密を避ける行動が、
周囲の方の命を助けることになります」
と書かれたボードを持って、
メッセージを発しています。
(写真は2020/4/7 日本経済新聞より)
ここで質問です。
A&Bと、Cの違いは何でしょうか?
県の分析は “利他性”。
人のためになるとイメージできれば、
人は自分の行動を変えるわけですね。
Cの文にはそれがない。
確かにそうですね。
もう一つ、私の、ことば屋的分析
からすると、
A&Bは言語パターンが
<人間重視型>。
人に焦点をあてた単語が並んでいます。
Cは<物質タスク重視型>。
お堅い概念や情報ばかり。
”自分ごと”にしにくいです。
さらに、
Cには<全体型>といって、
漠然とした抽象的なことばが
並んでいます。
どうもピンときません…..。
一方のA&Bは、より具体的に
表現しています。
パターンとしては<詳細型>。
イメージしやすいです。
<人間重視型> + <詳細型>
= 物語(ストーリー)
なんですね。
ほんの短い呼びかけでも
そこにストーリーがあると
人は動く。
いざという時に、
周囲の人の行動を変えるために、
あなたはどんなことばを
発しますか?
何かの参考になれば幸いです。
PS:
広島県の取り組みを知って、
私は、行政も住民との
コミュニケーションを
継続改善してるんだ~、と
ちょっと感動しました。
ではまた!
坂本 夏子
ことば屋&人事屋
LABプロファイル®
マスターコンサルタント
トランスフォーメショナル
コーチ®
人事コンサルタント